Consultation case
会社の業務に多く関わる弁護士の仕事の中でも、取引先との法的処理の問題についてのご相談は、非常に多くを占めるものです。その都度、法的なリスク、見込などを検討し、速やかに適切だと思われる対応を検討させていただいております。
特に債権回収については、ご自分の会社で行う方法もご提案させていただいていますので、早めにご相談いただくことをお勧めいたします。
さて、今回からは具体的な「取引先とのトラブル」の相談例をご紹介します。
債権回収は迅速性が重要になってきます。あまりに対応が遅れる場合には、別の債権者に先を越されてしまいますし、取引先が倒産した場合には回収不能となってしまう恐れもあります。早期に法的手続をお取りいただく方がよいでしょう。
弁護士に依頼すると、費用対効果に見合わない場合もあります。金額次第では弁護士へ委任いただく方法ではなく、自社で回収を行う手段もあります。
自社で回収を行うには、次の3つの方法があります。
①内容証明郵便
②支払督促
金銭の支払又は有価証券若しくは代替物の引渡しを求める場合に限ります。
③少額訴訟
1回の期日で審理を終えて判決をすることを原則とする,特別な訴訟手続です。60万円以下の金銭の支払を求める場合に限り利用することができます。
もっとも簡便な方法は①内容証明郵便です。これは郵便局所定の様式にて相手方に請求する方法ですが、請求するのみで強制力はありません。
②支払督促
裁判所に申し立てをして「支払督促申立書」を送付してもらう方法となります。また、相手方(債務者)の所在地の簡易裁判所に申し立てることになります。これは証拠を調べることも事情聴取をすることもなく、一方的に債権者の言い分(形式的な書面)だけで裁判所が「金を払え!」と催促するものなので、「支払督促申立書」と一緒に「異議申立書」も同封されています。催促を受けた相手方は「身に覚えがない」「一括の支払いは無理だ」ということなどについて、この申立書を使って「支払督促申立書」の到着後14日以内に異議申立てをします。一括で払える人はほとんどいないので、催促を受けた相手方は、「異議あり」とだけ書いて提出することになります。すると「訴訟」に移ることになります。
「支払督促申立書」が届いてから(異議申立てをしないで)14日以上経過すると、裁判所は「仮執行宣言付き支払督促申立書」という書類を相手方に送ることになります。
この書類についても、受け取った相手方は14日の間異議申立てができます。相手方がここで異議申し立てをした場合も、やはり「訴訟」に移ります。
訴訟になると、裁判所に出向いて、今後の支払いについて話し合うことになります。もし「仮執行宣言付き支払督促申立書」も相手方が無視した場合には、法的に借金の存在が認められたことになり、判決が確定してしまい、強制執行も可能になることになります。このように「支払督促」は、相手方が反論せず、異議を唱えなかった場合には、裁判をせずに判決を得たのと同じ効力が得られることになります。こうした「支払催促」はお金の請求が対象の場合には、すべて利用できます。
ただし、相手方が督促異議を申し立てると通常訴訟(裁判)に移行します。この場合、請求額が140万円以下である場合はそのまま相手方の住所のある簡易裁判所で、140万円を超えている場合には相手方の住所地の地方裁判所で行われますので、訴えを起こす側から見れば遠方になってしまいます。
今回のケースの場合、相手方も支払いの遅延を認めている訳ですから、裁判所の介入した「支払催促」により、無理してでも何とかスムーズに支払ってくれる可能性はあります。ですが、もともと内容や金額に争いがあるような場合には、異議を唱えられて、訴訟に発展してしまう場合を覚悟しなければなりません。
③少額訴訟については、次回ご説明します。