Consultation case
残業代請求には時効があります。
時効の起算点としては、毎月の給料支払日から3年となりますので、毎月の給料支払日から3年で時効消滅します。したがって、会社としては、請求された日から3年以上前の残業代については、支払う必要がありません。
経営者の方から、「長く勤務してきた従業員が、突如退職し、残業代を求めて会社に牙をむいてきた。」とご相談の中でお話を伺うことがあります。
残業代請求の時効は、前述のとおり3年ですが、裁判などで出される証拠を見ると、それよりももっと以前から、サービス残業の実態を克明に記録した手帳や日記などが従業員側から提出されることがあります。従業員側としては、時効があるのでやむなく3年までしか遡れなかった、と考えていることが予想されます。そう考えると、3年よりももっと前から、その従業員は、会社に不満を持っており、「いつか辞めたら残業代請求してやろう。」と思っていたことがよくわかります。
経営者の方からお話を聞くと、「そんな風に思われていたなんて全く気付かなかった」という方か、「以前から会社に反抗的で手を焼いていて、いつか辞めてほしいと思っていたが、こんなことまでしてくるなんて。他の従業員は真面目で会社を思って請求してくるはずもないのに。腹立たしい。」という方か、大きく2分されます。
いずれにしても、3年まるまる遡って請求を受けるということは、それ以前から社内で不満の火種があったということです。
会社として一番のリスクは、当該従業員だけでなく、他の従業員への連鎖です。今後、新たに飛び火し、他の従業員からも残業代請求をされてしまうと、恐ろしい金額の負担を強いられることになります。一つの事象を教訓に、隠れた不満の火種を早急に解消し、飛び火しないよう対処することが肝要です。
当該従業員への対処ももちろん重要ですが、他の従業員へのフォローを厚くし、残業代に関する規定や取り扱いを見直す必要があります。
経営者としては、その後の3年間は気が気ではありませんが、3年で会社の体制を大きく改善するきっかけとも言えます。事件が起きてすぐは冷静でなかった経営者の方も、あとになって、「高い授業料ではあるけど、いい勉強になったよ。」とおっしゃることも多いのが実感です。